人の手が入ったFD3Sはどのような方向性でチューニングされたのか?
2015年10月。FD3Sの実車の下見を行って現状を確認した。装着されたものでは主に内装とエンジン周り足元。エンジン周りは特にボンネットを開けて、ボディのシール類などもできる限り確認して修理した形跡がないかを確認する。
購入条件としては色以外の確認として、まず車体番号、修復歴、そして現状仕様だ。現状仕様は購入後にどこから「直し」を入れていくかの検討のためと他人が手を入れた仕様からその知識や仕上げに対するこだわりなども含めて観察し、オーナー像からクルマの維持状態を想像してみようと思ったからだ。
まあ、それは想像で参考程度。購入の判断で優先するのは「修復歴」と「車体番号」だ。
1型に間違いなし。20年前の初代FD3Sを思い出す。
まずはプライベートで仕上げていく内装がどんなものかを確認ついでにバッテリーを接続してもらい、エンジンや各部電装系統の稼働確認も行った。
この時点で真っ先に車体番号を確認したが、1型に間違いなし。
初代FD3Sから離れて20数年以上たった今、まさかまた1型に乗ることになるとは。しかし、当時は新車でピカピカのスーパーカーだったFD3Sも今となっては旧車の部類で、この数年間色々と情報を入れて調べていた甲斐もあってFD3Sの構造にも詳しくなっていたので、最新のスーパースポーツに比べるとそのパーツ構成や構造も理解できて、エンジンルームも単純なものに見えた。
FD3Sが今でも多くのファンを抱えて、現役なのは当時の車たちが自動車技術の一旦の確立を経て生産されたと同時に、この30年間以上はコンピューター制御の進歩はあったものの、内燃機を搭載した自動車の進歩が止まりつつ、EV移行や安全装置の方に各メーカーが注力していった事。
FD3Sの先進性の象徴でもあった今でも古さを感じさせない基本ボディのデザインと完成度。それから「人間がすべてコントロールして走る」というピュアスポーツの真髄にあると思う。
電装系を確認
リトラも開閉したが問題なし。ライト類の点灯やメーターのタコ踊りなどもなし、補機類の稼働についても問題はなかった。リトラクタブルのヘッドライトは変更することなく残すが、ライトユニットそのものはバルブをHID化して今の時代に合わせる予定。

内装の確認
内装全体は手入れされていないし、擦り傷や劣化した部分も多く、リアに関しては内張りもなかった。ここはすべて再生しコクピット周りは自分の理想系に再構築する。

センターコンソール部分
ここは計画を立てて真っ先に直しをいれたいところ。エアコンは移設されて設定位置も視認できないような状態。役割不明のトグルスイッチ。不要なメーターもある。EVCやマルチリンクメーターのコントローラーもここまで統一感が無視された配置や使用頻度の低さから考えると隠蔽してもいい。

ラゲッジスペース部分
ひどいのは内装むき出しでプラスチックパーツの切り欠きなどのいい加減な処理。シート裏を見るとラゲッジスペースにあるべきマットは切り取られている。
LEG MOTOR SPORTの強化バーはこのままでも使えるが、ストラットカバーはない。内装を見ただけで、お世辞にも大事にされた車だとは思えない。
エンジンルーム
エンジンルーム内ははっきり言ってなんの手入れも清掃もされていないような状態で、この時点で電装の要であるオルタネーター、バッテリー、ハーネス類まで将来的に問題が生じるだろうと予測できた。それが早い時期か劣化が進んでからかは未知数なので、根本的な部分から手直しを始めることになる。
1型では古いタイプの冷媒を使っているエアコンだから、そこも気になる。電気系統とメカ、冷却なども制御する部分でもあり、全面的なアップデートが必要かもしれない。
それからボンネットを開いてすぐに目が行ったのがこのインタークーラーとパイピング部分だった。
まずタービンに空気を吸い込む入口のフィルターだが、これはおそらく取り付けられた後に一度も交換されていないように思える。劣化も進んでいるが、もうとっくに廃盤となっているパーツだ。
それからインタークーラー本体。これはパイプの根本の切断形跡や吸気フィルターに合わせるための空気室加工がされており、明らかにFD専用品ではないと断定。導風板もないという状態だ。要するに「見た目だけのVマウント」だ。
インタークーラーの本体側に切断や溶接まで行っているのに、パイピングによる吸気抵抗は考慮されていなくて、補機のプーリーを交わすためにきついRのついたパイピングはシリコンジョイント部分の処理からしてパイプ加工の手抜き(おそらくポン付けパーツの加工品)としか思えない。
よくよく見ていると、大きなR部分は裏側が加工され、こんなところにブローオフバルブが取り付けられていた。
これは全く意味不明な取り付けで、これのためにREのターボチューンでは基本中の基本といえる冷却効率を格段に下げているわけだ。せっかくの大型インタークーラーはDIYなのかどこかのショップで加工されたものか不明だが、おそらく他の部分ではこのような専門的な加工処理は行われていないので、少なくとも溶接やインタークーラーの取り付けができるショップか加工業者の手によるものだろう。
足回りの確認
足回り、特にサスペンション部分や車高調、タイヤ、ブレーキ系統は購入後にまず交換をしたい消耗品だから何でもよかった。
それでも一応ストラット上部や外側からわかる範囲でどんなものが取り付けれているのかは確認した。
まず確認したのはリアのホイール、タイヤ、ブレーキ周り。
見るからに古いタイヤでヒビも入っているし、劣化して固くなってる。「とりあえず履いてるだけ」で販売用に業者が抵当な中古をつけただけかもしれないが、ホイールまで今まで手入れされたような痕跡がなく、ブレーキダストがこびついていた。
ブレーキディスクもリアでこの状態。サビつき、摩耗、おそらくパッドはノーマル。キャリパーだけが手直しで再利用可能と判断。
車体下から覗き込んでみると車高調はAPEX製だった。なんという釣り合いのなさ。てっきり緑色か黄色いやつが入ってるのではないか?と想像していたが、ダンパー側の減衰量を大きく上下して調整の上で実走行してみれば、そのへたり具合も体感的にわかる範囲だろうし、タイヤを外せばショックからのオイル漏れの有無なども確認できるはずだ。
販売価格は高いが購入を決定
ここまで10分程度の下見で判断する限り、状態と販売価格は釣り合っていない。ただショップ側も修復歴がないことや、シャシ状態、1型の希少性は知っているからこそか、とりあえずフルチューン的な部分に値打ちをつけたかのどちらかだろうと考えられる。
とにかくシャシの状態が悪くて、その他ドアやトランクリッドなど硬盤が貧弱な後期モデルは根本的な部分を解消できないので、絶対に避けたい。初期型でも修復歴があるようなシャシは避けたいのでここまで条件の合う車体を探し続けてきた。
おまけとしては上出来なGT-ADキットも外装くらいきちんと手入れされているはずと考えておけば上出来で手抜き塗装にも目をつぶろう。
ここは全部外して整形を整えればそのままオールペンまでもっていける大型パーツだし、そもそもノーマルだったら想定しているサイズのタイヤが入らないのはわかっていたから、そこから始めていくと初期予算がかかりすぎてしまうのだ。中身を試して、アップデート、最終的にオールペンという完成形までの大まかなロードマップのチューニング計画が破綻してしまう。
20数年以上、乗っていないMTとFD3Sに慣れていく必要もあり、いきなり外装を変更すると万が一のクラッシュがおきたときに目も当てられない。
その場の判断で「ボディー以外は捨てる」覚悟でこのFD3Sの購入を決めた。中古車なので納車自他も一ヶ月以内だろうし、年内にある程度手入れすれば、寒い時期にとりあえずの状態を試すこともできる。
こうして私は見つけてからわずか3日で二代目FD3Sを購入した。
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